放課後。外から運動部のやる気に満ちた声が聞こえる。
窓に目をやると、田口が窓の外を見ているようだ。

「なに見てんの?」

俺も席から立ち上がり、田口の隣へと移動する。
田口の視線は、ゆっくり左右に移動されていた。その2つの視線の先には、サッカー部のグラウンドに、野球部のグラウンド。
俺たちの教室はだいたい校舎の中央にあるから、グラウンドを広く見ることができるのだ。
それにしても田口は、なにを思って他人の青春を見ているのだろう。

「いやさあ……」
「うん?」
「サッカーと野球だったらどっちがもてるかなって」
「……。さあ……?」

まあ結局こいつは飢えている。

「俺さあ、女の気がしれねえよ」
「なんで?」
「だってさあ、野球部ってハゲじゃん」

野球部のグラウンドを見て田口が言う。

「ハゲのどこがいいんだ?」

不満げに口を尖らせ、首を捻る田口。なんとなく野球部のいいところを探し出す俺。

「あれだよ」
「どれだよ」
「ほら、野球部のやつらって甲子園一生懸命目指すじゃん? そういう懸命さに惚れるんだよ」
「なるほど……」

納得したのか、うんうんと呟きながら首を縦に振る田口。

「サッカー部だってよ、靴下長いじゃん」

今度はサッカー部のグラウンドを見て言う。

「サッカー部はまあ……顔いいやつ多いからな」

現に俺たちのクラスのサッカー部は皆彼女持ちだ。

「ちくしょう俺もサッカー部入ろうかな」
「いや入ったからってイケメンになれるわけじゃないから」
「だよなあ……」
「なに。どうしたんだよ。そんな悩んで。すきなやつでもできたのか?」

冗談半分でにやにや笑いながら問うと、田口は顔を真っ赤に染めて俺を見た。

「えっ、いるのか?!」
「いやいやいや! いないいない!」
「じゃあなんでそんな顔真っ赤なんだよ?」
「笑わないか?」

真っ赤な顔で真剣に俺を見る田口。その真剣さに、俺は受け入れる。うなずく。

「ユエがな」

ユエ。田口の3つ下の妹だ。

「最近な」
「うん」
「成長期で」
「うん」
「胸が……こう……ね?」

田口が胸のまえで腕を前後にくるくるまわす。
なるほど。

「どんだけあんの?」
「こんぐらい……んであいつ、家ではTシャツ短パンでいるから……」
「……おま、妹に対して盛ってんの?!」

俺の率直な言葉に、田口の顔が一層赤くなる。

「あっははは!! なんだそれ!」
「わ、笑うなって言ったろ?!」
「ひっひっひ……あー、腹痛え! あはははは!」
「なんだよ東田のばか! 真剣に言ったのによー!」

真っ赤な顔した田口は頬を膨らませ俺を睨む。それでも俺の笑いは止まらない。

「えーそれで田口はユエちゃん見るたびちょっとドキってすんの?」
「そーだよ! そのとおりだよ! 悪いか!」
「いや悪くはねえけどさ。まあユエちゃんかわいいしな。無理ねえよ」

兄貴も大変なんだな。そう言って田口の頭を撫でてやる。
子どもらしさが素直に出たのか、睨んでいたきつい目がおさまる。

「……っておい」
「ん?」
「おまえいまユエのことかわいいって言ったな」
「あ……」
「まさか東田もユエのことそういう目で見てるんじゃ……」
「いやいやいや! べつに変な目で見てないから!」
「東田ばーか! おまえみたいなへなちょこにユエは渡さん!」

人差し指を立てて俺のまえに突き立てる田口。

「……ごめんなさい」

俺はべつになにも悪いことしてないけどとりあえず謝る。そうすることで、田口は納得するからだ。

「うむ!」

案の定田口は納得して、再びグラウンドに目をやった。

(単純なやつ……)

でもどこかかわいらしいやつだ。
にやける口元を手で隠して、俺もグラウンドに視線を戻した。


東田のキャラがちがいすぐる。長編として読んではだめなのです。←
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