人生というのは単純だ。
母親の股から産まれてきて、おぎゃーて泣いて、それからハイハイしたり小便漏らしたり大便漏らしたり、裸足でコンクリート道路はしゃぎまくって、幼稚園に入ってその辺じゃ見たことない女の子か、きれいで若い先生に惚れてそのまま自然消滅して小学校入って……。
まあ面倒だから以下略とするが、とりあえず適当に生きていてもなんとかやっていけるものなのだ。
だけどやっぱりどこか人生は複雑だ。

「俺はバレーボールになる〜」

屋上のど真ん中に寝そべっていた田口は急に言い出す。
こいつはなにかと急になにかを言い出すタイプで、大半がくだらない内容だったりする。
たとえば、「俺はオタッキーになる〜」と急に言い出して、何事かと問うと、オタクの人は超巨乳の女のビキニ姿……まあフィギュアなんだけど、それを眺めているだけで一週間は過ごせるんだとか。
あんなちっぽけなフィギュアが、オタクにとっては大事な大事な彼女らしい。
そんなある意味しあわせなオタクがうらやましかったとか。

「今度はなんだ。もう人間じゃないぞ」

それにおおきい声で言うものだから、屋上の扉に目をやった。
何故かと言うといまは授業中……つまり俺と田口はさぼり中なのだ。

「このまえたまたまバレーの試合見に行ったんだよー」
「うん? プロの?」
「ちがうちがう。中学の。ユエが出るって言うから見に行ったんだ」

ユエ。田口の3つ下の妹のことだ。田口とは似つかぬかわいらしい顔立ちで、とても真面目で年下とは思えないほどしっかりしている。
……少々女として気になっているのは、彼にはぜったいに言えない。

「したらさー、あの女バレのユニフォーム見たか?」
「ユニフォーム? ノースリーブシャツに短いパンツだっけ」
「そう! それ! 元々俺ァ年下はすきじゃねえんだけどあの細い二の腕! 白い太もも! あんな極楽に行けるものなら行きてえよ!」

田口が起き上がり、興奮したのか大声で俺に言う。彼の手は興奮で上下に思いっきり振られている。
なんか最近こいつ飢えてるな……。

「だからバレーボールになりたいのか?」
「そう! あんなすてきな女の子に囲まれるなんて最高!」
「でもさ」
「なんだ?!」
「バレーボールってスパイクとかするから、殴られるみたいで痛いんじゃねえ?」

上下に思いっきり振られていた手が、興奮が冷めたのかぴたりと止まった。

「な? バレーボールだけはやめておけよ」

その手が力が抜けたように垂れさがり、なにを考えているのか眉間に皺が寄り、真剣な表情になった。

「いや! いい!」
「は?」
「ああいう子に叩かれるなら俺、快感だと思う!」

俺を見る。その目はきらきらと輝いていた。
もう俺にはどうしようもねえよ……。
スパイクをする真似をする田口を見ながら、とりあえず明日バレーボールの着ぐるみを着て来ることがないように祈った。


1番最初に書いた東田田口の話。性格めちゃくちゃ^^
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